ラグビートレーニング再開のガイドライン
改訂 2020年6月19日
作成 2020年5月31日
ラグビー活動の安全な再開を目指してガイドラインを作成しました。日本スポーツ協会、日本障がい者スポーツ協会作成の「スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」、World Rugby「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うラグビー活動の安全な再開について」を踏まえ、特に下記の4点を重視しています。
ラグビーに関わるすべての皆様には、ラグビーというスポーツに関わる団体であることの社会的責務、及び、ラグビー競技そのものが持つ社会的価値について強く意識を持っていただき、慎重な再開をお願いいたします。
〇 活動再開が選手、選手の家族、関係者、地域社会における感染拡大につながらないこと
COVID-19に感染することで多くの方に影響を与えてしまうことや、無症状であっても自らが他人に感染させ得ることを厳しく認識すべきと考えます。
〇 活動再開が地域社会のCOVID-19対応資源に負担をかけるものではないこと
ラグビーの活動再開によって、マスクや消毒液などを含む医療資源・設備の供給や医師・看護師を始めとする医療従事者への過度な負荷等の問題を発生させてはならないと考えます。
〇 ラグビーの価値を大切にした活動を実施していくこと
十分な活動再開が可能となるまでの期間は、移動を伴う大会の開催、激しい身体接触が発生する試合の実施については難しいことが想定されます。それまでの間は、チームで体を動かすこと、ミーティングなどでコミュニケーションをとることなど、チームとしての活動を工夫し、ラグビーを仲間と楽しむこと、ラグビーを通して心身を鍛えることなどの面でのラグビーの価値を大切にした活動を行ってほしいと考えます。
〇 COVID-19対応を含め、「安全」が最重要事項であることをプレーヤーだけでなく、関係者全員が認識して、ラグビーに取り組むこと
COVID-19感染防止に関わらず、ラグビーには激しい身体接触があり重症事故につながる可能性がある競技であることを選手、指導者、全ての関係者が十分に認識し、あらゆる面において安全な環境においてプレーすることをより一層重視してほしいと考えます。
なお、本ガイドラインは5月31日の時点で発行された第1版をもとに、現段階で得られる知見に基づき更新をしております。今後も関係省庁のガイドラインや各地域の感染状況を踏まえて、逐次見直すことがあることにご留意願います。
2 活動の再開
活動再開にあたっては、チーム所在地の都道府県、市町村の方針に従うことが大前提であり、再開の判断に迷われた際は、チームが所在するスポーツ主管課や衛生部局等への相談をお願いします。学校部活動の場合、学校の方針に従ってください。
また、自粛による不活動からもたらされる以下のリスクについて確認をして、再開に取り組んでください。
日本ラグビー協会「COVID-19に伴うトレーニング活動自粛期間からトレーニング再開に向けた
リコンディショニングに関するガイドライン」より
(1)感染状況に応じた再開について
「特定警戒都道府県」「感染拡大注意都道府県」「感染観察都道府県」のように都道府県ごとの感染状況の評価に従って「再開」についてのガイドを提示しコンタクト練習の禁止をお願いしていましたが、すべての都道府県において感染状況が改善したため、7月1日からは別表に示すレベル5の対人コンタクト練習を含めて、段階的に練習を再開していただくこととします。(コンタクト練習については、次章の「3 活動の再開時における段階的プレー復帰」と別表を参照してください。)
但し、感染状況によって、レベル1~4の段階に戻すことを想定しておいてください。現時点で、新型コロナウイルス感染リスクは低下したものの、ワクチンが開発されていないことなど依然として新型コロナウイルス感染は脅威であり、感染リスクの最小化の対応が求められます。
(2)トレーニング実施時の感染防止策[1]について
【日常生活での注意点】
新型コロナウイルスは発症する2日前の方や症状のない方からも感染する可能性があります。トレーニング以外の生活の中で感染しないために、換気の悪い密閉空間、多くの人が密集している密集場所、近い距離での会話や発声が行われる密接場面、これらのいわゆる三つの密を回避するとともに、身体的距離の確保やマスクの着用、手指衛生などの基本的な感染対策を継続し、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を積極的に取り入れてください。
【トレーニング前】
①チームとして感染防止対策を確立しておいてください。また、World Rugby のオンラインモジュールを活用しトレーニング再開に関する理解を深めることを推奨します。
②以下の事項に該当する場合は、トレーニングへの参加の見合わせ、参加させないことを周知徹底してください。
>体調が良くない場合(例:発熱、咳、咽頭痛などの症状がある場合)
>同居家族や身近な知人に感染症が疑われている方がいる場合
>過去14日以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航又は当該在住者との濃厚接触がある場合
③毎朝の体温測定、健康チェックを行ってください。
④ミーティングはデジタル[2]、または、屋外で行う必要があります。難しい場合は、1人当たり4m2のスペースを確保できる屋内で、すべてのプレーヤーとスタッフができる限りマスクを着用した状態で行ってください。
⑤移動は自動車の相乗りを避け、公共交通機関を利用する場合は混雑を避け、徒歩や自転車での移動を併用してください。
⑥移動が越県になる場合は、チーム所在地及び居住地の都道府県、市町村の方針に従ってください。
⑦新型コロナウイルス感染症が発生した場合は、選手及び関係者は必ずチームへ速やかに報告してください。
⑧トレーニング当日には、自宅及び集合時に検温を行ってください。
⑨感染経路の追跡を行うため、個人情報の扱いに十分注意しながら、日付、場所、参加者情報(氏名、電話番号、メールアドレス)は記録してください。また、必要に応じて保護者の情報も記録してください。
⑩目、鼻、口を触らないように心掛け、どうしても触るときには手洗いや手指消毒をした後に触るようにしてください。
【トレーニング時】
①トレーニング中、トレーニングしていない間も含め、最低でも2メートルの距離を人と人との間で保ってください。1名当たり4m2のスペースを確保してください。
②人と人との挨拶や体に触れること(握手や抱擁)は積極的に回避してください。
③トレーニング中の選手のマスクの着用は選手の判断によるものとします。
*マスク着用により十分な呼吸ができないことによる身体への影響の可能性があることや熱中症などに留意してください。
なお、指導者はマスクを着用してください。(選手に対して指示・説明する際には、ソーシャル・ディスタンスを取ることにも注意してください。)
④こまめな手洗い、アルコール手指消毒薬等による手指消毒を実施してください。また、チームで手指消毒薬を準備してください。
⑤プレーの説明、消毒、手洗いの際、密集・密接を作らないよう工夫してください。
⑥人数ごとにグループを分け、時間をずらしてトレーニングを計画してください。
⑦可能な限り、各グループにコーチを割り当て、そのコーチはそのグループだけを監督し、グループ外のメンバーとは距離を保つようにしてください。
分けられたグループ間の接触が練習前後に発生しないように配慮ください。
⑧トレーニング中に唾や痰をはくことは極力避けてください。
⑨可能な限り屋外でトレーニングを行ってください。
⑩発熱などの症状が確認された選手・関係者は直ちにトレーニングを中断し、隔離等の適切な対応を行うとともに、必要に応じて保健所や医療機関への相談あるいは受診を促してください。
⑪目、鼻、口を触らないように心掛け、どうしても触るときには手洗いや手指消毒をした後に触るようにしてください。
⑫対人のコンタクト練習においては「人数」(対人の距離)と「時間」の2つの要素から感染リスクを最小化することに留意してください。
【周辺環境】
①選手及び関係者が、トレーニング会場でシャワーを浴びたり食事をしたりすることは避けてください。
②可能な限り、トレーニング用具の共有は避ける必要があります。どうしても必要な場合(ジムなど)は、使用するグループが入れ替わる度及びトレーニング前後に環境や器具を0.05%次亜塩素酸ナトリウムあるいは70%以上のアルコールを用いて消毒し、こまめに換気をしてください。
③ウォーターボトル、タオル、ヘッドキャップなどの個人の備品は、分かりやすく区別できるようにして、共用・使いまわしをしないでください。
④栄養補給サプリメントを共用しないでください。
⑤チームは、手洗い場、更衣室/ミーティングスペース、トイレについて、それぞれ確保すると共に以下の点を注意してください。
手洗い場
・石鹸(ポンプ型が望ましい)を用意する。
・手洗いを30秒以上行うよう掲示、もしくは周知をする。
・手洗い後に手を拭くための、ペーパータオルを用意するか、もしくは個人のタオルを持参させ、共用タオルを使用しないようにする。
更衣室/ミーティングスペース
・「三つの密(密閉、密集、密接)」を避ける。
・室内またはスペース内で複数の関係者が触れると考えられる場所(ドアノブ、ロッカーの取手、テーブル、椅子等)については0.05%次亜塩素酸ナトリウムあるいは70%以上のアルコールを用いてこまめに消毒をする。
・換気に配慮する。
トイレ
・トイレ内の複数の関係者が触れると考えられる場所(ドアノブ等)について0.05%次亜塩素酸ナトリウムあるいは70%以上のアルコールを用いてこまめに消毒をする。
・石鹸(ポンプ型が望ましい)を用意する。
・手洗いを30秒以上行うよう掲示、もしくは周知をする。
・手洗い後に手を拭くための、ペーパータオルを用意するか、もしくは個人のタオルを持参させ、共用タオルを使用しないようにする。
⑥ゴミの廃棄について、トレーニング時にでた鼻水、唾液などがついたゴミはビニール袋に入れて密閉して縛り、ゴミを回収する人は、マスクや手袋を着用し、マスクや手袋を脱いだ後は、必ず石鹸を用いた30秒以上の手洗い、あるいはアルコール手指消毒薬による手指消毒をしてください。
【その他】
都道府県、市町村や教育委員会、学校の方針によって、施設の利用方法等の方針が異なる場合がありますので、トレーニングの再開を計画される際は必ず確認し、準備をしてください。(名簿の提出、同意書の提出など)
3 活動の再開時における段階的プレー復帰
新型コロナウイルス感染症に伴うラグビー活動の安全な再開を行うには、これまで述べた感染防止策を講じ、都道府県、市町村や教育委員会、学校の方針を理解して、適切な感染予防処置の下でのトレーニング計画やトレーニング環境の整備が必要になります。また、その計画においては、選手の負傷のリスクを最小化し、プレーに復帰させるために、段階的トレーニング計画やリコンディショニング[3]を行う十分な時間が求められます。別表1に示すレベル別必要期間を参考にしてください。レベル5にはレベル2、3、4を経たうえで進んでください。
レベル4で「相手」のある練習を可能としていますが、「相手」は向かい合う相手のことでソーシャル・ディスタンスを保つことが求められます。タグラグビー、タッチラグビーは必要なソーシャル・ディスタンスが取れないので不可とします。
レベル5の活動再開にあたっては、リコンディショニングを意識し、必ず強度の低いフィジカルコンタクトから高いフィジカルコンタクトへと段階的に移行するようにしてください。日本ラグビー協会の「COVID-19に伴うトレーニング活動自粛期間からトレーニング再開に向けたリコンディショニングに関するガイドライン」を確認し、選手が安全にプレーへ復帰するための準備をしてください。
特に、コンタクト練習については当ガイドラインにてコンタクトプレーの段階的準備について説明していますので参考としてください。
4 報告
チームに感染者がでた場合、感染経路の追跡等の感染拡大防止の観点から、チーム代表者の方は都道府県協会の安全対策委員会へご報告をお願いします。(様式はフリーです。)
報告事項
・発症年月日
・性別、年齢
・カテゴリー(例:スクール、高校、クラブ、社会人等)
・転帰(感染した結果どのようになったか)
以上
[1] 日本スポーツ協会「スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」及びWorld Rugby「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うラグビー活動の安全な再開について」を参考
[2] オンラインでのミーティングについては、HPコーチング部門の「オンラインで行うコーチングの可能性」も参考にしてください。
[3] 怪我、疾病、不活動により低下した基礎体力や運動能力を、元の水準まで回復させることを目的としたトレーニング活動
<参考資料>
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2020年5月25日)
厚生労働省「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました(新型コロナウイルス感染症)
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月14日)
内閣官房新 「移行期間における都道府県の対応について」 (2020年5月25日)
スポーツ庁 「安全に運動・スポーツをするポイントは?」の改正について
スポーツ庁 スポーツ関係の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインについて
文部科学省「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&Aの送付について(5月21日時点)」
(公財)日本スポーツ協会、(公財)日本障がい者スポーツ協会
「スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/jspo/guideline2.pdf
https://www.jsad.or.jp/news/改訂イベント再開ガイドライン.pdf
World Rugby
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うラグビー活動の安全な再開について」
別紙 レベル別活動指針 (2020.6.19改訂)
レベル | 規模 | 活動単位 | 活動内容 | 留意点 | 期間 |
1 | 禁止 | 個人単位 | ・体力トレーニング、個人のボールを使った活動 | ・マスク着用・場合により未着用 | ー |
2 | 10名 程度 | グループ 単位 | ・相手をつけない個人または少人数のランニング/ハンドリング/キッキング ・体力トレーニング | ・マスク着用・場合により未着用 ・活動時/非活動時のソーシャル・ディスタンスの確保 | 1週間 |
3 | 50名 以下 | チーム 単位 | ・相手をつけない個人、少人数またはチーム単位のランニング/ハンドリング/キッキング ・体力トレーニング | ・マスク着用・場合により未着用 ・活動時/非活動時のソーシャル・ディスタンスの確保 | 1週間 |
4 | 100名 以下 | チーム 単位 | ・相手をつけたチーム単位のランニング/ハンドリング/キッキング ・体力トレーニング | ・マスク着用・場合により未着用 ・活動時/非活動時のソーシャル・ディスタンスの確保 | 2週間 |
5 | 制限 なし | チーム 単位 | 通常トレーニング 但し、対人コンタクト練習については次表の段階的導入を参照 | ・マスクは場合により着用 ・非活動時のソーシャル・ディスタンスへの配慮 | 別示 |
<対人コンタクト練習の段階的導入>
レベル | 規模 | 単位 | 内容 | 留意点 | 期間 |
5.1 | 10名以下 | グループ 単位 | ・相手をつけたチーム単位のランニング・ハンドリング・キッキング(防御側タッチあり) ・防御側タッチを入れた簡易ゲーム ・タグラグビー | ・防御側タッチは胸より下に限定 ・防御をつける活動は人数・時間の要素からリスクの最小化 ・手指及びタグの消毒 ・活動相手のメンバーの固定 | 2週間 |
5.2 | 10名以下 | グループ 単位 | 用具を使った1人のコンタクト(ヒット、タックル) | ・活動グループメンバの固定 ・用具の消毒 | 2週間 |
5.3 | 20名以下 | 個人単位 | 1対1の対人コンタクト(ヒット、タックル) | ・着替えの準備 | 2週間 |
グループ 単位 | 小人数のユニットプレー(3人スクラム、2人ラインアウト、3人までのラック・モール) | ・着替えの準備 | |||
5.4 | 制限なし | グループ 単位 | ユニットプレー | ・着替えの準備 | 2週間 |
チーム 単位 | ゲーム形式 | ・着替えの準備 |
注意 1.各段階には前の段階の活動内容を含みます。
2.次のレベルに進むために必要な強度の練習をそのレベル内で実施してください。
3.レベル5.4の練習を必要と考えられる期間と量にわたって実施したうえで試合を行うようにしてください。