第58回全国大学選手権大会2回戦〔11月28日〕/福岡大学vs朝日大学/試合レポート

福岡大学 vs 朝日大学

福岡大学
朝日大学

令和3年11月28日(日) 天候:晴れ 博多の森陸上競技場【福岡】

13:00キックオフ

【レフリー】大内想太(関西協会)
アシスタントレフリー】吉原崇宏(日本協会)、桑野友裕(九州協会)、徳田智(九州協会)

福岡大学 朝日大学
前半 後半   前半 後半
3 0 T 1 4
3 0 G 1 3
0 0 PT 0 0
0 0 PG 0 1
0 0 DG 0 0
21 0 7 29
21 合計 36
反則
PK FK PK FK
9 0 前半 7 0
4 1 後半 5 0
13 1 合計 12 0

マッチレポート

第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会2回戦は、冬の寒さが和らいだ穏やかな晴天のもと、博多の森陸上競技場で行われた。

この日の2回戦を前に、福岡大学は九州学生リーグにおいてフォワードの運動量をベースにした速いリサイクルと外への展開を軸にしたポゼッションラグビーで、防御が間に合わない状態を作り勝ち抜いてきた。
一方、朝日大学はフィジカルを全面に押し出したフォワードで防御を集め、空いたスペースにアタックすることで1回戦を大差で勝ち抜いた。
今節の見所は、お互いのゲームプランを実行するためのブレイクダウンの攻防である。

<前半>
朝日大学のキックオフでゲームスタート。
福岡大学はキックオフキャッチからのキックを封印、ダブルラインフォームをセットし、バックドアを使ったワイドアタックでアウトサイドブレイクを連発する。
3分、福岡大学はラインアウトからモールを形成したあと、素早くサイドをついて②高木がトライ、⑮細元のゴール成功。【福7-0朝】

福岡大学はアンブレラディフェンスを使い、ボールを外に運ばせずバッキングのフォワードにコミットさせる防御を繰り出す。
更にタックルにおいては1人は下に、1人はボールにコミットするダブルタックルで朝日大学の連続したアタックを分断する。
朝日大学はセットプレーで優位に立ちたいが、チャンスであるラインアウトモールでも後手を踏む厳しい展開となる。
13分、福岡大学はラインアウトからモールを形成したあと、サイドアタックを繰り返し⑦井上がトライ、⑮細元のゴール成功。【福14-0朝】

朝日大学はラインアウトモールからサイドアタックでペナルティを奪うと、強みを活かすスクラムを選択するが福岡大学はこのスクラムを耐えきる。
22分、福岡大学は敵陣で得たラインアウトからムーヴを使い③坂口がトライ、⑮細元のゴール成功。【福21-0朝】

朝日大学はペナルティを得たラインアウトからピールオフ、パワーポッドからスイベルパスを使ったムーヴなど工夫したアタックを試みるが、福岡大学はそれらを封印する素晴らしディフェンスで、攻防の主導権を掌握する。
32分、朝日大学は敵陣スクラムで⑧サムエラがサイドアタックからトライ、⑪ピーラナツのゴール成功。【福21-7朝】

更に朝日大学は連続したラインアタックからペナルティを奪い、スコアを詰める判断でペナルティキックを選択するが惜しくも外れる。
福岡大学はフェーズアタックからペナルティを奪い、敵陣ゴール前でモール攻撃を選択するが、朝日大学が守り抜きパイルアップ。
前半終了:福岡大学21-7朝日大学

写真

<後半>
福岡大学は再び敵陣ラインアウトモールからサイドアタックを試みるが、朝日大学の防御が勝りトライを奪えず。
朝日大学は連続したアタックを繰り返すが、ペナルティやエラーで得点に繫げることが出来ない。
朝日大学は敵陣でモールを形成するも、福岡大学フォワードがそれを阻止する。
この時間帯から「朝日大学の連続したアタックを我慢強く止める福岡大学ディフェンス」という構図が増加し、試合終盤に向けてのベンチワークが重要になる。
16分、朝日大学は福岡大学プロップ交代直後のスクラムをプッシュし、⑧サムエラのサイドアタックでトライ、ピーラナツのゴール成功。【福21-14朝】

この後の時間帯からゲーム展開が変わりはじめる。
朝日大学は大きなプラン変更はせず個々が走り込みながらのキャッチ&ランでフィジカルバトルを継続し、ゲインラインの攻防を有利に進め出した。
福岡大学はここまでブレイクダウンの攻防において、早いサポートと低い姿勢で朝日大学のリサイクルスピードをスローダウンさせることに成功していたが、徐々にそれを許す展開となり、コンタクトシチュエーションでアンダープレッシャー状態を作りだしてしまう。
前半から続く朝日大学のコンタクトで疲弊した福岡大学は、前半のような早いリサイクルが出来なくなり、スコアもパワーバランスも互角となる。
朝日大学はデリバリーしたボールをプラン通りに動かし、福岡大学エリアに侵入することが容易になる。
福岡大学はここまで好調だったラインアウトのミス。
朝日大学はトランジションからアタックするが惜しくもエラー。
27分、朝日大学は再びトランジションから連続したアタックで③原渕がトライ、ピーラナツのゴール成功。【福21-21朝】

残り10分になると朝日大学のリサイクルスピードが更にあがり、福岡大学は順目のポジショニングが間に合わずペナルティが増加していく。
33分、朝日大学はアンストラクチャーからのアタックでペナルティを得ると、逆転となるペナルティキックを選択しピーラナツ成功。【福21-24朝】

34分、朝日大学は個々がゲインラインに乗っていくため、福岡大学は下がりながらも順目のディフェンスを整えようと試みるがノミネートミスが発生。朝日大学の⑩前田がトライ、ピーラナツのゴール成功。【福21-31朝】

福岡大学はタックル成功率も下がりだし、キックオフからのボールを再獲得することができず、朝日大学の連続したアタックにプレッシャーを受ける。
37分、朝日大学は獲得したボールを失うことなく、⑭金城がトライ、ピーラナツのゴール不成功。【福21-36朝】

福岡大学も残り僅かな時間から積極的に展開するがエラー。
ノーサイド。

<考察>
前半は福岡大学が自らの強みである運動量と展開力で、高いレベルのポゼッションラグビーにより朝日大学を封じ込めた。
しかし、朝日大学は80分間シンプルなフィジカルバトルを展開したコリジョンラグビーで福岡大学のフィットネスを削ることに成功し、勝利を得る結果となった。

両チームともコンテストキックがない戦術で、ラグビーの醍醐味であるボールゲームと格闘技の融合を味わえた好ゲームだった。

福岡大学の展開力と精度の高いディフェンスを目の当たりにした朝日大学は更にレベルアップしたと思われ、次節の大学選手権3回戦、関西4位と対戦が楽しみである。

写真

記者会見

福岡大学

福岡大学

〔監督〕築城康拓

4大会ぶり、そして通算では24回目の出場となった大学選手権で初勝利を狙っていたが、負けて非常に悔しい思いだ。
前半は自分達のやりたいラグビーをオフェンス、ディフェンス共に出来ていたが、後半は強いプレッシャーを受けて相手に流れを持っていかれたな、という印象だ。

〔ゲームキャプテン〕久保田直之
ゲームの前半は非常に良かったが、体力の消耗等で後半は足が止まってしまい、スコアも含めて相手にペースを持っていかれた。自分達は展開力を武器にしていたが後半はそれを活かす場面が無く、逆に相手の強みを活かしてしまったのが敗因だと思う。

――前半リードを奪って後半を迎えるゲームプランだったと思うが(前半終了時は21-7で福岡大学がリード)、これは予想通りだったのか。あるいはもう少し点差を広げておく想定であったのか?

築城康拓 前半に関してはもっとトライを取れるような勿体ないチャンスは確かにあったものの、当初のプラン通りにすごく良いゲームをやってくれたと思う。

――前回の出場時も前半リードして後半に逆転される展開だったと思うが、今後の課題として後輩達へはどう伝えたいか?

久保田直之 フォワード、バックス含めて強いコンタクトを受けて下がってしまった部分があるので、日頃から意識を高めて、コンタクトでは強い当たりをしていくことが今後必要になるのではないかと思う。


朝日大学

〔監督〕吉川 充
今日は素晴らしいグラウンドで良い天気の中でラグビーをさせて頂き感謝申し上げる。
結果は本当にどちらが勝つか分からない様なゲームだったが、後半勢いが出た我々が勝たせて頂いた。試合を介して選手達の成長を感じる事が出来る試合だった。

〔キャプテン〕大野京介
「絶対勝つ」と言って試合に挑んだが、最初硬くなった選手がいた。だが試合が進むにつれ自分達がやるべき事をやれるようになっていった。コンタクトの面で自分達の強みを発揮して最後勝ち切る事が出来た。

朝日大学

――今日のゲームプランは?

吉川 充 福岡大学さんは我々にないスキルがあるチームだったので、ボールを持たせると非常に厄介だなと思っていた。前半20分位で3本のトライを取られた様に、非常にテンポ良くラグビーをされるので、我々が勝つのであれば後半20分が勝負だとは思っていた。
色々なプランを準備していたが、前半は中々うまく行かなかった。だが、キャプテン中心に後半何とか立て直す事が出来た。

――後半バックス陣がゲインする事が増えたが、作戦を変えたのか、相手のスタミナが切れたのか?

大野京介 後半はフォワード陣がコンタクトの面で圧倒して(相手を真ん中に)寄せたのでバックスにスペースが出来た。全員がスペースを作る事を意識していてそれが出来た。

――前半途中から(0-21でリードされた頃から)バックスに展開せずにフォワード中心の攻撃に変わったが、相手のスタミナを奪う作戦だったのか?

吉川 充 先程も話したが、福岡大学さんには本当に上手な選手が多いので相手の強い部分で勝負したくなかった。スペースを狭く使いながら、体力や強みを奪って行きたいという部分でプランとして考えていた。


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